眼精疲労に悩むあなたへ

現代病「眼精疲労」との闘い

現代社会において、私たちの目はかなりの負担に晒されています。スマートフォン、パソコン、タブレットなど、デジタルデバイスの使用はもはや生活の一部となり、仕事からプライベートまで、常に画面を見つめる時間が長くなっています。このような生活様式は、知らず知らずのうちに私たちの目に多大なストレスを与え、「眼精疲労」という形で現れます。

「たかが目の疲れ」と侮るなかれ。眼精疲労は、単なる目の疲れに留まらず、目の奥の痛み、かすみ目、ドライアイといった目の症状だけでなく、頭痛、肩こり、首のこり、吐き気、めまい、さらには精神的な疲労感やイライラ感など、全身にわたる不調を引き起こす深刻な問題です。仕事の効率低下、集中力の散漫、ひいてはQOL(生活の質)の著しい低下にもつながりかねません。

多くの人が、市販の目薬や休憩、マッサージなどでその場しのぎをしていますが、根本的な解決には至らず、慢性的な眼精疲労に悩まされ続けているのが現状です。今回はそんな眼精疲労に対して鍼灸治療がなぜ良いのか紹介したいと思います。

眼精疲労とは何か?その症状と原因

眼精疲労は、単なる目の疲れとは一線を画します。休息をとっても回復しない、あるいは一時的に回復してもすぐに再発する目の疲労状態を指し、その症状は多岐にわたります。

1. 眼精疲労の主な症状

眼精疲労の症状は、大きく分けて「目の症状」と「全身症状」の2つに分類されます。

【目の症状】

  • 目の痛み・重み: 目の奥が痛む、ズキズキする、目が重く感じる。
  • かすみ目・ぼやけ: 物がぼやけて見える、焦点が合いにくい。
  • 充血・目の渇き(ドライアイ): 白目が赤くなる、目がゴロゴロする、乾く。
  • まぶしさ: 光がまぶしく感じる、光を見ると痛みを感じる。
  • 目のピント調節機能の低下: 近くや遠くが見えにくい、ピントが合うまでに時間がかかる。
  • まぶたの痙攣: 目の周りの筋肉がピクピクと震える。

【全身症状】

  • 頭痛: 目の奥からくる頭痛、こめかみや後頭部の痛み。
  • 肩こり・首のこり: 首から肩にかけての筋肉の緊張、重だるさ。
  • 吐き気・めまい: 重度の疲労感からくる吐き気や平衡感覚の異常。
  • イライラ・集中力の低下: 精神的な疲労、作業効率の低下。
  • 倦怠感: 全身の疲労感、だるさ。

これらの症状が複合的に現れることも多く、日常生活に大きな支障をきたします。

2. 眼精疲労の主な原因

眼精疲労の原因は一つではなく、複数の要因が絡み合っていることがほとんどです。

  1. 長時間のデジタルデバイス使用(VDT症候群): 最も大きな原因として挙げられるのが、パソコン、スマートフォン、タブレットなどのディスプレイを長時間見続けることです。ディスプレイを見る際は、無意識にまばたきの回数が減り、目が乾燥しやすくなります。また、細かい文字や画像を凝視することで、目のピント調節を行う毛様体筋に過剰な負担がかかります。
  2. 視力や屈折異常: 近視、遠視、乱視、老眼など、視力に問題があるにもかかわらず適切な矯正をしていない場合、目を酷使することになり眼精疲労を引き起こしやすくなります。合わないメガネやコンタクトレンズの使用も同様です。
  3. ドライアイ: 目の表面を覆う涙液の量が不足したり、質のバランスが崩れたりすることで、目が乾燥し、異物感や痛み、充血などの症状が現れます。デジタルデバイスの使用やエアコンによる乾燥、加齢などが原因となります。
  4. 目の筋肉の緊張: ピント調節を行う毛様体筋や、眼球を動かす外眼筋の過度な緊張が、目の疲れや痛みの原因となります。これらは、集中力の維持や不適切な姿勢によっても引き起こされます。
  5. 生活習慣とストレス: 睡眠不足、不規則な生活、栄養の偏り、過度なストレスなども、自律神経のバランスを崩し、目の機能低下や全身症状を引き起こす原因となります。特にストレスは、血行不良や筋肉の緊張を招き、眼精疲労を悪化させる要因となります。
  6. 環境要因: 照明の不適切さ(暗すぎる、明るすぎる、反射)、エアコンの風による乾燥、換気不足なども、目の環境を悪化させ、眼精疲労を誘発します。

これらの原因が単独、あるいは複合的に作用することで、私たちの目は限界を超え、様々な不快な症状として現れるのです。

鍼灸治療の基礎知識:なぜ眼精疲労に効果があるのか?

西洋医学的なアプローチでは、眼精疲労は「目の使いすぎ」や「筋肉の疲労」として捉えられがちですが、鍼灸治療を含む東洋医学では、より包括的な視点から症状を捉え、根本原因にアプローチします。鍼灸治療では、これらの東洋医学的な診断に基づいて、患者一人ひとりの体質や症状に合わせたツボを選択し、気血の巡りを改善し、臓腑のバランスを整えることで、眼精疲労の根本的な改善を目指します。

鍼灸治療のメカニズム:眼精疲労への多角的アプローチ

鍼灸治療が眼精疲労に有効であるとされる理由は、その多岐にわたる生理作用にあります。

  1. 血行促進作用: 鍼を特定のツボに刺入したり、お灸で温めたりすることで、その部位や関連する部位の血管が拡張し、血流が促進されます。眼精疲労の場合、目の周囲や首、肩の血流改善は、疲労物質の排出を促し、新鮮な酸素や栄養を供給することで、目の機能回復に直接的に貢献します。特に、PC作業などで凝り固まった首肩の筋肉の血流改善は、頭部への血流をスムーズにし、目の緊張を緩和します。
  2. 自律神経調整作用: 私たちの体は、意識せずとも機能する自律神経(交感神経と副交感神経)によってコントロールされています。ストレスや長時間のVDT作業は、交感神経を優位にし、筋肉の緊張や血管の収縮を引き起こします。鍼灸治療は、副交感神経を優位にする作用があるため、リラックス効果をもたらし、目の周りの筋肉の緊張を和らげ、血管を拡張させ、涙液の分泌を促すなど、目の機能を正常に戻す働きがあります。これにより、ドライアイの改善にもつながります。
  3. 鎮痛作用: 鍼刺激は、脳内でエンドルフィンやエンケファリンといった内因性の鎮痛物質の分泌を促進します。これにより、目の奥の痛みや頭痛、首肩の痛みを緩和する効果が期待できます。また、痛みの閾値(いきち)を上げることで、痛みに敏感な状態を改善します。
  4. 筋肉の緊張緩和作用: 鍼を直接、硬くなった筋肉(トリガーポイントなど)に刺激することで、筋肉の過緊張を緩め、柔軟性を取り戻します。目のピント調節を担う毛様体筋や、首、肩、後頭部の筋肉の緊張が緩和されることで、目の負担が軽減され、血流も改善されます。
  5. ホメオスタシス(恒常性)の維持・向上: 鍼灸治療は、特定の症状を抑えるだけでなく、身体全体のバランスを整え、生体が本来持っている自然治癒力を高めることを目的としています。自律神経、内分泌系、免疫系といった身体の重要なシステムに働きかけることで、眼精疲労だけでなく、それに伴う全身の不調を改善し、健康な状態を維持する力を高めます。

これらの複合的な作用により、鍼灸治療は眼精疲労の目の症状だけでなく、それに付随する全身の症状にも効果的にアプローチし、根本的な改善へと導くことができるのです。

 眼精疲労に効果的な主要なツボ

眼精疲労の治療では、目の周囲のツボだけでなく、首、肩、手足、背中など、全身にある関連するツボを組み合わせて使用します。

【目の周囲のツボ】

  • 睛明(せいめい): 目頭のやや内側、鼻の付け根のくぼみ。目の疲れ、かすみ目、ドライアイ、鼻づまりに効果的。
  • 攅竹(さんちく): 眉頭の陥凹部。目の疲れ、頭痛、眼瞼下垂に。
  • 太陽(たいよう): こめかみ、眉尻と目尻の中間点よりやや後方。目の疲れ、頭痛、めまいに広く用いられます。

【目の関連ツボ(遠隔のツボ)】

  • 風池(ふうち): 首の後ろ、髪の生え際。首や肩のコリ、頭痛、目の疲れ、めまいに非常に効果的。目の血流改善に重要なツボ。
  • 合谷(ごうこく): 手の甲、親指と人差し指の骨が交わるくぼみ。全身の痛みに効果的な万能ツボですが、目の疲れや頭痛、肩こりにも有効。
  • 太衝(たいしょう): 足の甲、足の親指と人差し指の骨が交わるくぼみ。肝の機能を整え、目の疲れ、イライラ、頭痛に効果的。

これらのツボはあくまで一例であり、患者さんの体質や症状の程度、原因に応じて最適なツボが選ばれます。

鍼灸治療の具体的な施術の流れ

当院での施術は以下のような流れで進められます。

  1. 問診・四診: 症状、生活習慣、体質などを詳しく伺います。
  2. 鍼の施術: 患者さんの状態に合わせたツボを選定し、細い鍼を刺入します。鍼は使い捨てで滅菌されたものを使用するため、感染の心配はありません。多くの場合、ズーンとした「響き」を感じますが、痛みはほとんどありません。
  3. 灸の施術(必要に応じて): 血行促進や体を温める目的で、お灸を併用することもあります。
  4. 手技・マッサージ整体(必要に応じて): 凝り固まった首や肩の筋肉を緩めるためのマッサージや、ストレッチの指導を行うこともあります。
  5. 生活指導: 症状の改善を早め、再発を防ぐために、日常生活での注意点やセルフケアについてアドバイスを行います。

鍼灸治療は、継続することで効果を実感しやすくなります。症状の程度にもよりますが、週に1~2回のペースで継続して受けることで、症状が軽減され、体質改善へとつながっていくでしょう。

眼精疲労予防のためのセルフケアと鍼灸治療の併用

鍼灸治療で症状が改善しても、日々の生活習慣が改善されなければ、再び眼精疲労に悩まされる可能性があります。鍼灸治療の効果を最大限に引き出し、眼精疲労を予防するためには、セルフケアとの併用が非常に重要です。

1. 日常でできる眼精疲労のセルフケア

  1. デジタルデバイスの適切な使用:
    1. 20-20-20ルール: 20分ごとに20フィート(約6m)離れた場所を20秒間見る。
    1. 適度な休憩: 1時間ごとに5~10分程度の休憩を取り、目を休ませる。
    1. 画面との距離: 少なくとも40~70cm離して使用する。
    1. まばたきを意識的に増やす: ドライアイ対策になります。
  2. 目の温め・冷やし:
    1. 温める: 蒸しタオルやホットアイマスクで目を温めることで、血行が促進され、目の筋肉の緊張が和らぎます。
    1. 冷やす: 急性の炎症や熱感がある場合は、冷やしたタオルなどでクールダウンさせることも有効です。
  3. 目のストレッチ・マッサージ:
    1. 眼球運動(上下左右、斜め、円を描くように動かす)。
    1. 目の周りのツボ(睛明、攅竹、太陽など)を優しく押す。
    1. 首や肩のストレッチを行い、血行を改善する。
  4. 適切な照明と環境:
    1. 部屋の照明は明るすぎず暗すぎず、均一な明るさにする。
    1. 室内の湿度を適切に保つ。
  5. 生活習慣の見直し:
    1. 十分な睡眠: 目と体の回復には十分な睡眠が不可欠です。
    1. バランスの取れた食事: ビタミンA、B群、C、E、アントシアニン(ブルーベリーなど)、DHA・EPA(魚など)など、目に良い栄養素を積極的に摂取する。
    1. 適度な運動: 全身の血行促進、ストレス解消につながります。
    1. ストレスマネジメント: ストレスは眼精疲労を悪化させる大きな要因です。

2. 鍼灸治療とセルフケアの相乗効果

鍼灸治療は、身体の根本的な状態を整え、自然治癒力を高めることで、眼精疲労の症状を改善します。そこに、日々のセルフケアを組み合わせることで、以下のような相乗効果が期待できます。

  • 治療効果の持続と向上: 鍼灸治療で整えられた身体の状態を、セルフケアで維持・向上させることができます。
  • 再発予防: 根本的な体質改善と日々のケアにより、眼精疲労の再発リスクを低減できます。

鍼灸師は、治療だけでなく、個々の生活習慣に合わせた具体的なセルフケアのアドバイスもしてくれます。治療とセルフケアの両輪で、眼精疲労に負けない健やか手に入れましょう。

患者様の声

今までデスクワークをしている方の治療機会は多く、皆さん首肩こりだけではなく眼精疲労にも悩まされていました。

特に、ピントを合わせるスピードが落ちてきた、目がかすむという方が多く血流の改善や目に関わる筋肉の緊張を取っていくことで、仕事中も症状が軽くなりその分集中できるようになったという声や、視界が明るくなり目の重だるさや疲れた感じが飛んで行ったと喜ばれることが多かったです。

生活の質を上げていくためにも目の疲れに悩まされている方は是非一度当院にお問い合わせください。

現代病「眼精疲労」との闘い

現代社会において、私たちの目はかなりの負担に晒されています。スマートフォン、パソコン、タブレットなど、デジタルデバイスの使用はもはや生活の一部となり、仕事からプライベートまで、常に画面を見つめる時間が長くなっています。このような生活様式は、知らず知らずのうちに私たちの目に多大なストレスを与え、「眼精疲労」という形で現れます。

「たかが目の疲れ」と侮るなかれ。眼精疲労は、単なる目の疲れに留まらず、目の奥の痛み、かすみ目、ドライアイといった目の症状だけでなく、頭痛、肩こり、首のこり、吐き気、めまい、さらには精神的な疲労感やイライラ感など、全身にわたる不調を引き起こす深刻な問題です。仕事の効率低下、集中力の散漫、ひいてはQOL(生活の質)の著しい低下にもつながりかねません。

多くの人が、市販の目薬や休憩、マッサージなどでその場しのぎをしていますが、根本的な解決には至らず、慢性的な眼精疲労に悩まされ続けているのが現状です。今回はそんな眼精疲労に対して鍼灸治療がなぜ良いのか紹介したいと思います。

眼精疲労とは何か?その症状と原因

眼精疲労は、単なる目の疲れとは一線を画します。休息をとっても回復しない、あるいは一時的に回復してもすぐに再発する目の疲労状態を指し、その症状は多岐にわたります。

1. 眼精疲労の主な症状

眼精疲労の症状は、大きく分けて「目の症状」と「全身症状」の2つに分類されます。

【目の症状】

  • 目の痛み・重み: 目の奥が痛む、ズキズキする、目が重く感じる。
  • かすみ目・ぼやけ: 物がぼやけて見える、焦点が合いにくい。
  • 充血・目の渇き(ドライアイ): 白目が赤くなる、目がゴロゴロする、乾く。
  • まぶしさ: 光がまぶしく感じる、光を見ると痛みを感じる。
  • 目のピント調節機能の低下: 近くや遠くが見えにくい、ピントが合うまでに時間がかかる。
  • まぶたの痙攣: 目の周りの筋肉がピクピクと震える。

【全身症状】

  • 頭痛: 目の奥からくる頭痛、こめかみや後頭部の痛み。
  • 肩こり・首のこり: 首から肩にかけての筋肉の緊張、重だるさ。
  • 吐き気・めまい: 重度の疲労感からくる吐き気や平衡感覚の異常。
  • イライラ・集中力の低下: 精神的な疲労、作業効率の低下。
  • 倦怠感: 全身の疲労感、だるさ。

これらの症状が複合的に現れることも多く、日常生活に大きな支障をきたします。

2. 眼精疲労の主な原因

眼精疲労の原因は一つではなく、複数の要因が絡み合っていることがほとんどです。

  1. 長時間のデジタルデバイス使用(VDT症候群): 最も大きな原因として挙げられるのが、パソコン、スマートフォン、タブレットなどのディスプレイを長時間見続けることです。ディスプレイを見る際は、無意識にまばたきの回数が減り、目が乾燥しやすくなります。また、細かい文字や画像を凝視することで、目のピント調節を行う毛様体筋に過剰な負担がかかります。
  2. 視力や屈折異常: 近視、遠視、乱視、老眼など、視力に問題があるにもかかわらず適切な矯正をしていない場合、目を酷使することになり眼精疲労を引き起こしやすくなります。合わないメガネやコンタクトレンズの使用も同様です。
  3. ドライアイ: 目の表面を覆う涙液の量が不足したり、質のバランスが崩れたりすることで、目が乾燥し、異物感や痛み、充血などの症状が現れます。デジタルデバイスの使用やエアコンによる乾燥、加齢などが原因となります。
  4. 目の筋肉の緊張: ピント調節を行う毛様体筋や、眼球を動かす外眼筋の過度な緊張が、目の疲れや痛みの原因となります。これらは、集中力の維持や不適切な姿勢によっても引き起こされます。
  5. 生活習慣とストレス: 睡眠不足、不規則な生活、栄養の偏り、過度なストレスなども、自律神経のバランスを崩し、目の機能低下や全身症状を引き起こす原因となります。特にストレスは、血行不良や筋肉の緊張を招き、眼精疲労を悪化させる要因となります。
  6. 環境要因: 照明の不適切さ(暗すぎる、明るすぎる、反射)、エアコンの風による乾燥、換気不足なども、目の環境を悪化させ、眼精疲労を誘発します。

これらの原因が単独、あるいは複合的に作用することで、私たちの目は限界を超え、様々な不快な症状として現れるのです。

鍼灸治療の基礎知識:なぜ眼精疲労に効果があるのか?

西洋医学的なアプローチでは、眼精疲労は「目の使いすぎ」や「筋肉の疲労」として捉えられがちですが、鍼灸治療を含む東洋医学では、より包括的な視点から症状を捉え、根本原因にアプローチします。鍼灸治療では、これらの東洋医学的な診断に基づいて、患者一人ひとりの体質や症状に合わせたツボを選択し、気血の巡りを改善し、臓腑のバランスを整えることで、眼精疲労の根本的な改善を目指します。

鍼灸治療のメカニズム:眼精疲労への多角的アプローチ

鍼灸治療が眼精疲労に有効であるとされる理由は、その多岐にわたる生理作用にあります。

  1. 血行促進作用: 鍼を特定のツボに刺入したり、お灸で温めたりすることで、その部位や関連する部位の血管が拡張し、血流が促進されます。眼精疲労の場合、目の周囲や首、肩の血流改善は、疲労物質の排出を促し、新鮮な酸素や栄養を供給することで、目の機能回復に直接的に貢献します。特に、PC作業などで凝り固まった首肩の筋肉の血流改善は、頭部への血流をスムーズにし、目の緊張を緩和します。
  2. 自律神経調整作用: 私たちの体は、意識せずとも機能する自律神経(交感神経と副交感神経)によってコントロールされています。ストレスや長時間のVDT作業は、交感神経を優位にし、筋肉の緊張や血管の収縮を引き起こします。鍼灸治療は、副交感神経を優位にする作用があるため、リラックス効果をもたらし、目の周りの筋肉の緊張を和らげ、血管を拡張させ、涙液の分泌を促すなど、目の機能を正常に戻す働きがあります。これにより、ドライアイの改善にもつながります。
  3. 鎮痛作用: 鍼刺激は、脳内でエンドルフィンやエンケファリンといった内因性の鎮痛物質の分泌を促進します。これにより、目の奥の痛みや頭痛、首肩の痛みを緩和する効果が期待できます。また、痛みの閾値(いきち)を上げることで、痛みに敏感な状態を改善します。
  4. 筋肉の緊張緩和作用: 鍼を直接、硬くなった筋肉(トリガーポイントなど)に刺激することで、筋肉の過緊張を緩め、柔軟性を取り戻します。目のピント調節を担う毛様体筋や、首、肩、後頭部の筋肉の緊張が緩和されることで、目の負担が軽減され、血流も改善されます。
  5. ホメオスタシス(恒常性)の維持・向上: 鍼灸治療は、特定の症状を抑えるだけでなく、身体全体のバランスを整え、生体が本来持っている自然治癒力を高めることを目的としています。自律神経、内分泌系、免疫系といった身体の重要なシステムに働きかけることで、眼精疲労だけでなく、それに伴う全身の不調を改善し、健康な状態を維持する力を高めます。

これらの複合的な作用により、鍼灸治療は眼精疲労の目の症状だけでなく、それに付随する全身の症状にも効果的にアプローチし、根本的な改善へと導くことができるのです。

 眼精疲労に効果的な主要なツボ

眼精疲労の治療では、目の周囲のツボだけでなく、首、肩、手足、背中など、全身にある関連するツボを組み合わせて使用します。

【目の周囲のツボ】

  • 睛明(せいめい): 目頭のやや内側、鼻の付け根のくぼみ。目の疲れ、かすみ目、ドライアイ、鼻づまりに効果的。
  • 攅竹(さんちく): 眉頭の陥凹部。目の疲れ、頭痛、眼瞼下垂に。
  • 太陽(たいよう): こめかみ、眉尻と目尻の中間点よりやや後方。目の疲れ、頭痛、めまいに広く用いられます。

【目の関連ツボ(遠隔のツボ)】

  • 風池(ふうち): 首の後ろ、髪の生え際。首や肩のコリ、頭痛、目の疲れ、めまいに非常に効果的。目の血流改善に重要なツボ。
  • 合谷(ごうこく): 手の甲、親指と人差し指の骨が交わるくぼみ。全身の痛みに効果的な万能ツボですが、目の疲れや頭痛、肩こりにも有効。
  • 太衝(たいしょう): 足の甲、足の親指と人差し指の骨が交わるくぼみ。肝の機能を整え、目の疲れ、イライラ、頭痛に効果的。

これらのツボはあくまで一例であり、患者さんの体質や症状の程度、原因に応じて最適なツボが選ばれます。

鍼灸治療の具体的な施術の流れ

当院での施術は以下のような流れで進められます。

  1. 問診・四診: 症状、生活習慣、体質などを詳しく伺います。
  2. 鍼の施術: 患者さんの状態に合わせたツボを選定し、細い鍼を刺入します。鍼は使い捨てで滅菌されたものを使用するため、感染の心配はありません。多くの場合、ズーンとした「響き」を感じますが、痛みはほとんどありません。
  3. 灸の施術(必要に応じて): 血行促進や体を温める目的で、お灸を併用することもあります。
  4. 手技・マッサージ整体(必要に応じて): 凝り固まった首や肩の筋肉を緩めるためのマッサージや、ストレッチの指導を行うこともあります。
  5. 生活指導: 症状の改善を早め、再発を防ぐために、日常生活での注意点やセルフケアについてアドバイスを行います。

鍼灸治療は、継続することで効果を実感しやすくなります。症状の程度にもよりますが、週に1~2回のペースで継続して受けることで、症状が軽減され、体質改善へとつながっていくでしょう。

眼精疲労予防のためのセルフケアと鍼灸治療の併用

鍼灸治療で症状が改善しても、日々の生活習慣が改善されなければ、再び眼精疲労に悩まされる可能性があります。鍼灸治療の効果を最大限に引き出し、眼精疲労を予防するためには、セルフケアとの併用が非常に重要です。

1. 日常でできる眼精疲労のセルフケア

  1. デジタルデバイスの適切な使用:
    1. 20-20-20ルール: 20分ごとに20フィート(約6m)離れた場所を20秒間見る。
    1. 適度な休憩: 1時間ごとに5~10分程度の休憩を取り、目を休ませる。
    1. 画面との距離: 少なくとも40~70cm離して使用する。
    1. まばたきを意識的に増やす: ドライアイ対策になります。
  2. 目の温め・冷やし:
    1. 温める: 蒸しタオルやホットアイマスクで目を温めることで、血行が促進され、目の筋肉の緊張が和らぎます。
    1. 冷やす: 急性の炎症や熱感がある場合は、冷やしたタオルなどでクールダウンさせることも有効です。
  3. 目のストレッチ・マッサージ:
    1. 眼球運動(上下左右、斜め、円を描くように動かす)。
    1. 目の周りのツボ(睛明、攅竹、太陽など)を優しく押す。
    1. 首や肩のストレッチを行い、血行を改善する。
  4. 適切な照明と環境:
    1. 部屋の照明は明るすぎず暗すぎず、均一な明るさにする。
    1. 室内の湿度を適切に保つ。
  5. 生活習慣の見直し:
    1. 十分な睡眠: 目と体の回復には十分な睡眠が不可欠です。
    1. バランスの取れた食事: ビタミンA、B群、C、E、アントシアニン(ブルーベリーなど)、DHA・EPA(魚など)など、目に良い栄養素を積極的に摂取する。
    1. 適度な運動: 全身の血行促進、ストレス解消につながります。
    1. ストレスマネジメント: ストレスは眼精疲労を悪化させる大きな要因です。

2. 鍼灸治療とセルフケアの相乗効果

鍼灸治療は、身体の根本的な状態を整え、自然治癒力を高めることで、眼精疲労の症状を改善します。そこに、日々のセルフケアを組み合わせることで、以下のような相乗効果が期待できます。

  • 治療効果の持続と向上: 鍼灸治療で整えられた身体の状態を、セルフケアで維持・向上させることができます。
  • 再発予防: 根本的な体質改善と日々のケアにより、眼精疲労の再発リスクを低減できます。

鍼灸師は、治療だけでなく、個々の生活習慣に合わせた具体的なセルフケアのアドバイスもしてくれます。治療とセルフケアの両輪で、眼精疲労に負けない健やか手に入れましょう。

患者様の声

今までデスクワークをしている方の治療機会は多く、皆さん首肩こりだけではなく眼精疲労にも悩まされていました。

特に、ピントを合わせるスピードが落ちてきた、目がかすむという方が多く血流の改善や目に関わる筋肉の緊張を取っていくことで、仕事中も症状が軽くなりその分集中できるようになったという声や、視界が明るくなり目の重だるさや疲れた感じが飛んで行ったと喜ばれることが多かったです。

生活の質を上げていくためにも目の疲れに悩まされている方は是非一度当院にお問い合わせください。