
不妊症に悩むあなたへ
【妊活の新たな選択肢:不妊症と鍼灸治療の可能性】
「赤ちゃんが欲しい」と願うカップルにとって、不妊症は深刻な悩みです。近年、不妊に悩むカップルは増加傾向にあり、日本産科婦人科学会によると、不妊の検査や治療を受けたことがある(または現在受けている)カップルは、全体の約18.2%にものぼります。これは、およそ5.5組に1組のカップルが不妊で悩んでいる計算になります。
不妊治療は心身ともに大きな負担を伴うことが少なくありません。そんな中、西洋医学的な治療と並行して、あるいは新たな選択肢として、鍼灸治療が注目を集めています。
このブログでは、不妊症の基礎知識から、鍼灸治療がなぜ不妊に有効と考えられているのか、その科学的根拠や具体的な効果について、詳しく解説していきます。
不妊症とは?原因と現代の治療法
●不妊症の定義
日本産科婦人科学会では、「妊娠を望む健康な男女が避妊をしないで性交をしているにもかかわらず、一定期間(1年以上)妊娠しないもの」を不妊症と定義しています。ただし、女性の年齢が35歳以上の場合は、半年間妊娠しない場合でも、早めに検査を受けることが推奨されています。
不妊症の主な原因
不妊の原因は、女性側だけにあるわけではありません。WHO(世界保健機関)の調査によると、不妊症の原因は、女性のみに原因がある場合が41%、男性のみに原因がある場合が24%、男女両方に原因がある場合が24%、そして原因が不明な場合が11%と報告されています。
女性側の原因
排卵障害: 卵子がうまく育たない、または排卵されない状態。多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)や高プロラクチン血症などが原因となります。
卵管障害: 卵管が詰まっていたり、癒着していたりすることで、卵子と精子の出会いを妨げる状態。クラミジア感染症や子宮内膜症が原因となることがあります。
子宮因子: 子宮筋腫や子宮内膜ポリープ、子宮の奇形など、受精卵の着床を妨げる状態。
頸管因子: 子宮の入り口である頸管から分泌される粘液(頸管粘液)の異常により、精子が子宮内に進入しにくい状態。
免疫因子: 女性の体内に精子を異物とみなして攻撃してしまう抗体(抗精子抗体)が存在する状態。
男性側の原因
造精機能障害: 精子をうまく作れない状態。精子の数が少ない(乏精子症)、運動率が低い(精子無力症)、奇形率が高い(奇形精子症)などがあります。
精路通過障害: 精子の通り道が閉塞している状態。
性機能障害: 勃起障害(ED)や射精障害など。
原因不明不妊
検査をしても、明らかな原因が見つからない場合を原因不明不妊と呼びます。不妊症に悩むカップルの10〜25%がこれに該当すると言われています。
●現代の不妊治療
不妊治療は、原因や年齢、これまでの治療歴などを考慮し、段階的に進めていくのが一般的です。
タイミング法: 医師が超音波検査などで排卵日を予測し、最も妊娠しやすいタイミングで性交渉を持つよう指導する方法。
排卵誘発法: 排卵障害がある場合に、排卵誘発剤(飲み薬や注射)を用いて排卵を促す方法。
人工授精(AIH): 排卵の時期に合わせて、洗浄濃縮した精子をカテーテルで子宮内に直接注入する方法。
体外受精(IVF): 卵巣から採取した卵子と精子を体外で受精させ、培養した受精卵(胚)を子宮内に戻す方法。
顕微授精(ICSI): 細い針を用いて、1つの精子を卵子の中に直接注入して受精させる方法。
これらの治療は、多くのカップルに希望をもたらす一方で、経済的、身体的、そして精神的な負担が大きいことも事実です。
鍼灸治療は不妊にどうアプローチするのか?
鍼灸治療は、数千年の歴史を持つ東洋医学の治療法です。身体の特定のポイント(経穴、ツボ)に鍼(はり)を刺したり、灸(きゅう)で温めたりすることで、気(生命エネルギー)と血(血液)の流れを整え、身体全体のバランスを回復させることを目的としています。
不妊治療において、鍼灸は西洋医学とは異なるアプローチで、妊娠しやすい身体づくりをサポートします。
●鍼灸が不妊に有効とされる主なメカニズム
血流の改善: 鍼灸治療には、血管を拡張させ、全身の血流を促進する効果があります。特に、子宮や卵巣への血流が増加することで、子宮内膜が厚くなり、受精卵が着床しやすい環境が整えられます。また、卵巣への血流が改善されることで、卵子の質の向上も期待できます。
ホルモンバランスの調整: 鍼灸の刺激は、脳の視床下部や下垂体に働きかけ、ホルモン分泌を司る自律神経のバランスを整える効果があります。これにより、月経周期の乱れや排卵障害の改善が期待できます。
自律神経の調整とリラックス効果: 不妊治療中は、先の見えない不安やストレスに苛まれがちです。ストレスは、自律神経のバランスを乱し、血行不良やホルモンバランスの乱れを引き起こす原因となります。鍼灸治療には、心身をリラックスさせる効果があり、ストレスを緩和することで、妊娠しやすい身体の状態へと導きます。
免疫機能の調整: 鍼灸は、免疫系にも働きかけることが分かっています。着床のプロセスには、受精卵を異物として攻撃しないように、母体の免疫機能が適切に働くことが重要です。鍼灸は、この免疫寛容の状態をサポートする可能性が示唆されています。
●科学的研究から見る鍼灸の有効性
近年、鍼灸の不妊治療への有効性を示す研究が世界中で報告されています。
ある研究では、体外受精(IVF)を受ける女性に鍼治療を行ったグループと行わなかったグループを比較したところ、鍼治療を行ったグループの方が、妊娠率が有意に高かったという結果が報告されています。
また、別の研究では、鍼灸治療によって、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の女性の排卵率が改善されたり、男性の精子の質(数や運動率)が向上したりすることも示されています。
これらの研究は、鍼灸治療が、西洋医学的な不妊治療の効果を高める可能性を示唆しており、統合医療の観点からも非常に注目されています。
どのような治療を行うのか
鍼灸院では、まず丁寧なカウンセリングを行い、月経周期の状態、基礎体温、食生活、睡眠、ストレスの状況などを詳しくヒアリングします。その後、脈やお腹の状態を診ることで、一人ひとりの体質や不妊の原因を探り、その人に合ったオーダーメイドの治療方針を立てていきます。
治療では、手足やお腹、背中などにある、婦人科系の疾患やホルモンバランスの調整に効果的なツボに、髪の毛ほどの細さの鍼を打ち、温かいお灸をすえます。痛みはほとんどなく、心地よい温かさを感じ、治療中に眠ってしまう方も少なくありません。
通院の頻度と期間
体質改善にはある程度の時間が必要です。一般的には、週に1回のペースで、まずは3ヶ月程度続けることが推奨されます。卵子が成熟するまでには約3ヶ月かかると言われており、この期間に継続して治療を受けることで、卵子の質の改善や子宮内膜の状態の向上が期待できます。
安全性と副作用
鍼灸治療は、副作用がほとんどありません。しかしまれに、鍼を刺した場所が少し内出血したり、治療後に一時的にだるさを感じたりすることがあります。これらは、身体が好転する過程で起こる自然な反応であり、通常は1〜2日で治まります。
まとめ:希望を持って、あなたらしい妊活を
不妊症は、決して一人で抱え込む必要のない問題です。現代では、西洋医学の進歩により、多くのカップルが子供を授かることができるようになりました。そして、そこに鍼灸治療という選択肢を加えることで、妊娠への可能性をさらに広げることができるかもしれません。
鍼灸治療は、あなたの身体が本来持っている「妊娠する力」を引き出すお手伝いをします。心と身体のバランスを整え、リラックスして妊活に取り組むことは、何よりも大切なことです。
もし、あなたが今、不妊で悩んでいるのなら、一度、鍼灸治療という選択肢を検討してみてはいかがでしょうか。信頼できる鍼灸師との出会いが、あなたの未来を明るく照らす一助となるかもしれません。

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